先日、経済界のTOPが語った「終身雇用の崩壊」。様々なところで波紋を呼んでいますね。経団連会長の中西宏明氏は、「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。」と発言し、トヨタ自動車社長で自動車工業会会長でもある豊田章男氏は、「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言しました。
皆さんもかなり衝撃を受けたのではないかと思います。自分の雇用は守られなくなるのか、どのように生きていったら良いのかなど、不安を感じてしまった方も少なくないと思います。
経済界2大TOPの発言に対する考察は、色々な方が既に書かれているので、ここでは、技術者/エンジニアが終身雇用崩壊後の世の中でどうしていくかについてのお話をさせていただきたいと思います。
終身雇用は右肩上がりの経済成長前提
終身雇用や年功序列といった日本型雇用は、右肩上がりの経済成長前提にあったものですので、バブル崩壊後、徐々に成り立たなくなってきたのは当然のことです。
そして技術の進歩で業界の垣根がなくなり、自社で活躍できる技術者だけでは企業は生き残れなくなってきました。すると外部から自社にはない技術を持った技術者の中途採用を始めます。優秀な技術者を採用するには、”それなり”の給与を出す必要があり、定年までのトータルの給与で考えるといった今までの考え方は通用しなくなるので、終身雇用、年功序列といったものを維持するのは難しくなってきます。
令和時代の仕事を取り巻く環境はどうなるのか
今後、技術者/エンジニアとして働く皆さんを取り巻く環境がどうなっていくのかを考えてみます。
さらに雇用の流動化が進む
既に雇用の流動化が進んでいます(転職者数は2018年まで8年連続増加中)が、実際のところはまだまだ、転職回数を気にする企業が多いのが現状です。やはり、1つの企業に長く勤めるという働き方は社員側としては安心であり、好まれる傾向がありますし、企業側からしても「辞めにくい人」として好まれる傾向があります。
しかし、終身雇用崩壊の連日のニュースで、世間の不安が高まり、仕事のやりがいはないけど、 給与面や企業規模、ブランドなどの面で我慢して働いていた人たちが、これ以上我慢して頑張っても定年まで残れないならと、やりがいのある仕事を探し、積極的に転職を考え始めるのではないかと思います。
シニアは様々な変化についていけるかが鍵
シニアの技術者は、テクノロジーの進化で、どんどん変わっていく技術に対応できなければ、企業にとって高い給与を支払うのが厳しくなってきます。
日々のテクノロジーの進化についていける好奇心旺盛かつ柔軟な対応が出来るかが生き残れるかどうかのポイントになってきます。
安定の意味合いが変わる
終身雇用、年功序列といった日本型雇用下では、定年までのトータルの安心できる給与設定のある「経済的安定」と、特に成長し続けなくても、そして変化し続けなくても定年まで会社が面倒を見てくれる「精神的安定」がありました。
終身雇用がなくなると、それら「安定」がなくなります。今後の「安定」は、どこで働いているかで得られるものではなく、何ができるかによって得られるものに変わっていくと思います。
自社でしか通用しないスキルではなく、他の会社でも活かせるポータブルスキル(持ち運べるスキル)が、今後の「安定」となっていくでしょう。
令和時代の技術者のキャリアデザイン
今後は、大手、中小、ベンチャーのどこに勤めるのかではなく、何が経験できる会社なのかを考えることが必要です。
企業側が終身雇用を維持できないというならば、自身の技術者としての経験を積んでいき、社内での力ではなく、どこでも活かせる時代にあった力をつけることでしか「安定」は得られなくなります。
今は売り手市場と言われていて、実際に求人数も多いです。だからこそ、企業名や規模だけではなく、技術者としてどこでも活かせる力を付けられる環境に就職、転職できるよう、今まで以上に慎重に企業選定をしていかなければなりません。
良い経験ができる企業はどのように探したら良いかなど、これからの技術者のキャリアデザインについてのご相談は随時お受けしておりますので、お気軽にご相談ください。