家族の為に転職する、という方が増えているようです。ワークファミリーバランスを考えて働く上でネックとなるポイントとして、場所・時間・負荷の3つが真っ先に思い浮かびます。今回は、この中から場所について考えてみます。
場所について考えてみる
会社員として働く上で、場所が気になる主な機会は、出張と転勤でしょう。いずれも働く上で重要な任務です。今回は、出張にテーマを絞って、色々と考えていきます。
出張の場合
出張自体は、仕事のやりがいにも繋がりますし、会社の重要任務も多いですし、いつもと違う場所で違う人たちと働く楽しみもあります。その為、出張自体を嫌な事と捉える人は少ないと思いますが、家庭への影響と、頻度や行き先による負担が気になりだします。実際には、業界や企業、職種によっても、出張が多い場合と少ない場合があります。
出張先とは?
出張の目的とも関係してきますが、そもそも出張先とはどういう場所なのでしょうか?大きく分けて、自社の他拠点、顧客先、現場、その他、と分けられます。
自社の他拠点とは?
例えば、本社、事業所、工場、などが考えられます。本社で会議や研修があり、全拠点から人が集まるという話はよくあります。また、地域ごとの仕事に関わる事で事業所へ訪問したり、製造の確認の為に工場へ出張します。ものづくり技術者の場合、一番多いのが工場への出張でしょう。例えば自身が設計した製品の製造状況を確認しに行きます。新製品の出来具合を確認しに行ったり、製造過程で上手くいっていない時に呼び出されたりします。また、生産技術系の職種であれば、設備や生産工程に関しての仕事で現地へ行く事があります。何れにしても、自社の他拠点の場合は行き先が想定出来ます。
顧客先とは?
顧客先は、クライアント、エンドユーザー、パートナー、サプライヤー、ベンダーなどです。クライアントへの出張と言えば、ニーズのヒアリングや受注へ向けた、所謂営業的な内容が多いでしょう。エンドユーザーへは、製品の納入、立上げ、メンテナンス、トラブル対応など。サプライヤーやベンダーへは、発注に関する内容が多いでしょう。顧客先に関しては、ある程度想定は出来ますが、制限はありませんので、日本全国、海外もあるでしょう。
現場とは?
現場という言葉を使うのは、工事関係が多いです。建築現場、プラントや工場の現場です。建築現場は分かりやすいですが、ビルなどの建物、駅などの構造物、橋や高速道路などの公共建造物。プラントや工場も、発電所や水処理場、製造工場など様々です。出張の目的も、工事自体に関わる仕事から、現場に装置や機械を納入して設置したり、既存のそれらをメンテナンスしたり、様々あります。現場への出張の場合は、顧客先の時以上に場所が想定出来ず、特に大きな建造物の場合は都心から遠く、不便な場所の場合も多いです。
出張が多いと言われる職種に関して
では、こういった出張が多い職種にはどういうものがあるのか。ものづくり技術者の職種から考えてみましょう。
技術営業・サービスエンジニア
この職種は、その名の通り営業的な要素で出張になる事が多いです。ですので、前項に習うと顧客先への出張が多いと言えます。顧客からの相談の段階から受注という営業段階、又は納入の際の立会いなども関わるかもしれません。出張期間としては、短い傾向があります。
サービスエンジニア・フィールドエンジニア
この職種の場合は、製品の納入から立会い、立上げ、アフターサービスまで、幅広く対応します。また、工事関係の仕事であれば、工事期間は長く関わる事になるでしょう。前項に習うと、現場への出張が多いでしょう。出張期間としては、長くなる傾向にあります。
生産技術
実は、生産技術という職種は非常に幅が広く、その企業や業界によっても、仕事の守備範囲が変わってきます。今回のような出張が多い生産技術職となると、例えば本社に所属していて各生産拠点を対象としている生産技術であったり、何処かの工場などの生産拠点に所属はしているが他の生産拠点も対象としている生産技術などが考えられます。ですので、前項に習うと、自社の他拠点への出張が多いとなります。出張期間としては、中〜長期になる傾向があります。
プラントエンジニア
この職種も幅が広く、プラントに関わるエンジニアなのですが、プラントの計画から設計、工事に関わりますので、前項に習うと、現場への出張が多くなります。また、プラントの規模が大きくなればなるほど、それぞれの期間が長くなりますので、出張期間もプラントやプロジェクトの規模と比例して中〜長期になる傾向があります。
出張期間に関して
出張の場合は期間と頻度が気になるものです。まずは期間に関して考えてみます。
日帰り出張
一番短い出張は、日帰りの出張となります。そもそも日帰り出来る距離というのも限られますが、目的や内容も限られます。日帰り出張になる場合としては、自社の他拠点ですと何かの確認や会議やセミナー、顧客先ですと営業や打合せや確認、現場ですと立会いや点検など、1日で終わるような目的となると限られますね。
短期出張
出張が短い、長いの基準というのは実は難しく、ある人に聞くと『5日以上の出張は長期』と良い、別のある人に聞くと『1年以上が長期出張』と言っていました。残業時間が多い少ないの話でも同じなのですが、人間は自身の経験から感覚が生まれています。今回は、短期出張は1週間以内と定義します。実は、私が調節求人企業の方から聞くのは、この短期出張が一番多いパターンのようです。よく、設備・装置の立上げなどでの出張も、月曜日に行って金曜日までには帰ってくるというのが多いそうです。その他、自社の他拠点、顧客先、現場への出張でも、大半はこの短期出張のようです。
中期出張
ここでは、1週間超〜2ヵ月位を中期出張としてみましょう。まず、短い方から、1週間超になるような場合は、前項の立上げ業務が1週間で収まらない場合や、トラブルを伴い長引く場合、そして工事などで工期が1週間超で組まれている場合があります。土日を挟むと少し長い感じがするようです。そして、1ヵ月を超える出張となると、更に長いと感じますよね。こうなると、殆どがプロジェクト自体が長くて、常駐する必要がある状況になっています。暫く自宅に帰れない場合もありますね。そして、中期出張になると増えるのが海外出張です。特にここ最近は、海外企業と取引がない仕事でも海外出張は増えていますね。ものづくり業界で言うと、日本企業の海外生産拠点への出張がこれに辺ります。わざわざ海外へ行く訳ですから、短期よりも中期の方が多いようです。とは言え、行き先にもよりますが、ビザの関係で期間が制限されるのが通常です。
長期出張
2ヵ月を超える出張となると、感覚的には転勤に近くなってくるような気もしますが、出張が多い職種の方に聞くと、これくらいは普通と言う方もいらっしゃいます。当然、プロジェクトが2ヵ月以上になる場合、そして海外出張の場合が増えてきます。但し、海外出張の場合は前項でも触れたように、ビザが関係しますので、長期に滞在出来ない場合が多いです。また、1 年間海外出張(海外赴任や常駐も含め)となる場合もあるそうです。
実際の出張の頻度や期間
出張は、会社内の制度等に準じて行われます。ですが、実際に気になるのは、リアルな頻度や期間ですよね。ここでは、私が実際に、求人企業や転職相談者から聞いた、ものづくり企業での出張状況によってまとめてみます。
出張頻度について
出張頻度は、少ない方の場合は、年に1〜2回です。たまに行く場合ですね。出張の多い職種の場合は、月に1回位が少ないパターンでしょう。逆に多いパターンは、平均して年間の半分位出張先に居るという話がありました。もちろん、こういう方達の中には、前項の長期出張で行く方もいれば、一回の出張は短期〜中期でも、繰り返し出張へ行く方もいます。多くて半年と聞いて、少ないと思う方も、多いと思う方もいらっしゃるでしょう。
出張期間について
前項の通り、出張期間は、短期〜長期まであります。ただ現実的には、殆どが短期出張のようです。特に、設備関係のメーカーやサプライヤーでは、効率や予算や技術者の負担も考えて、なるべく長くならないようにしているようです。出張が多い職種の中でも、各職種で殆どが短期出張、たまに中期出張がある、という感覚です。
最近の出張に対する企業の考え方
一昔前ですと、企業は社員に出張させたがる、活躍する社員ほど出張に出ている、というイメージがあったかもしれません。それでは、最近はどうなのでしょうか。業界や職種によって差はありますが、実際に私が求人企業から聞いている内容をまとめていくと、出張は減少傾向にあるようです。その理由を表すキーワードは、経費削減、働き方改革、人手不足、退職防止、というようなものが挙げられます。経費削減に関しては、出張をすれば、旅費交通費・出張手当・時間外勤務手当などの経費が必ずかかります。頻度が増え、日数が増え、遠距離の出張となれば、経費はどんどん増えていきます。こういった経費を減らしたいと思うのは当然であり、特にリーマンショック以降は経費削減の為の出張制限があるようです。働き方改革に関しては、出張になれば家に居られない、家族との時間を過ごせない、会社が労働時間を管理しきれない、などなどの問題が発生します。人手不足はどの業界にも発生しています。その上、出張に出ていて社内にいないとなると、メイン業務が滞しますし、単純に人数も減ります。そして退職防止です。出張が多いことでの退職者が増えている事実があります。現実的に、出張が多いことでの転職相談も増えていますので、裏付けになっています。そして前述の人手不足に追い討ちをかけてしまいます。
同じ職種の転職でも出張が減るという方法
以前は、転職が多いという悩みの方は、職種を変えて転職するしか、解決法が無かったようです。しかし、現在は前述のように、各社が出張を減らす働き方を工夫してきていますので、同じ職種で経験を活かした転職でも、出張を減らしてワークファミリーバランスが良くなる事例が増えてきています。
働き方改革に成功した転職事例が増えています
今回のテーマに選んだように、このような事例が増えてきています。では、どうすれば無事に転職して働き方を改善出来るのでしょうか?それには、企業の実態を把握する必要があります。実際既存社員がどういう働き方をしているのか?そして重要なのが、どうやって出張を減らす事に成功したのか?これが明確で無ければ、実際は出張は減っていないかもしれません。しかし、これらを正確に把握するには、面接で質問するだけでは難しいかもしれません。面接官と現場のエンジニアには、どうしても距離がある事が多いというのも理由の一つです。上手く情報収集する方法を考えてみましょう。その企業を良く知るエージェントや、踏み込んで実態調査をしてくれるエージェントを活用する事も有効です。
まとめ
今回は、転職市場でも昨今重要視されている、家族を優先した働き方を実現する為の考察として、出張に関して、ものづくり業界内の情報と事例を交えて、考えてみました。仕事も、キャリアも、家族も、とても大事です。バランスを上手く取れるような働き方を、しっかりと考えましょう。将来後悔しない為にも。