「自分は設計経験がないから、設計職は無理だ。」とあきらめていたりしませんか?
転職の場合、新卒の就職活動の時と違い、基本的には経験者としての入社を求められます。企業が求めている条件と、応募者の経験内容が、ある程度合致していないと、採用には至りません。
しかし、タイミングや企業によって、未経験でも設計職にチャレンジできる場合もあります。
未経験だからと言って設計職をあきらめるのはまだ早いですよ!
未経験可・ポテンシャル求人というものが存在する
転職活動をしていると、「未経験可」や「ポテンシャル採用」、「ポテンシャル枠」といった求人を見かけることがあると思います。20代の方で、業務未経験だけれどもそういった「未経験可」の求人企業にチャレンジしたいという方は、多くいらっしゃいます。
「未経験可」「ポテンシャル採用」といった求人は、実際どのようなものをいうのか、また、本当に未経験で受け入れてくれるのかといったようなことからお話していきたいと思います。
何故、「未経験可」の求人募集を出すのか?
企業からしてみれば、成果を上げてくれる人、生産性の高い人を採用し、自社を成長させていきたいと考えるのが普通です。業務内容や業界の経験者が欲しいのは当然のことと言えます。しかし、一方でわざわざ未経験者を採用しようとしている企業があるのは何故なのでしょうか。それには様々な理由があります。
事業自体がニッチで経験者なんていないから
例えば、特殊な機械装置の設計であったり、業界的に転職者が少ない業界であったり(皆基本的に辞めないから他社から採れない)、そもそも競合他社が少なかったりといった場合、経験者を探そうとすると極端に候補者は少なくなってしまいます。
そのような時は、経験者を探すよりも、未経験者を採用して自社で育成したほうが早くて確実と考え、未経験者募集を行うことがあります。
カラーの固まった経験者よりも、まっさらな未経験者のほうが良いという考え
過去に経験者を中途で採用した際、今までの経験が染みつきすぎていて、会社として使いづらかった等といったことがあると、やはりまっさらな未経験者のほうが良いとなることがあります。
このパターンも自社で育成していこうという考え(しっかりとした研修体制があるかどうかは別)があります。
とにかく人が足りないから!
このような考えで募集している「未経験可」求人は、ちょっと考えたほうが良いかもしれません。前述の2例とは異なり、「ちょっと教えれば誰にでも出来る仕事だから」ということがあります。そのような仕事が良くないという話ではありません。今後、キャリア形成を行っていく上で、成長を感じていきたいと考える方や、とにかく力を付けて自分の市場価値を上げたいと考える方には、ミスマッチ求人になる可能性が高いということです。
未経験可、ポテンシャル採用の求人は何歳まで検討してもらえるのか?
未経験で将来の可能性(ポテンシャル)を検討してもらえるのは、業界や企業毎、タイミング、状況などによって異なりますが、基本的には30歳前半くらいまでと考えたほうが良いです。
もちろん例外もありますが、年齢が上がれば未経験で採用される可能性は確実に難しくなります。
未経験可求人は誰でも対象になるのか?
未経験可だからと言って、誰でも対象になるという訳ではありません。何かしら、引っかかる部分は必要になってきます。
業務は未経験だけど、業界は同じ
職種、仕事内容といった面では未経験だけど、同じ業界にいたという方は選考対象になることがあります。
未経験でも関連する基礎知識はある
業務としては未経験でも、その業務に関連する、あるいは業務に必要な基礎知識があると選考対象になります。例えば、機械設計未経験でも、機械工学の知識はある(学校で学んだレベルでOK)というような場合です。
趣味で取り組んでいる
技術者の場合、趣味で取り組んでいることが、転職活動で評価されることがあります。例えば、ロボコン活動や、自宅での電子工作、プログラミングが趣味などといったことです。
これらは、未経験でも募集ポジションの仕事内容に近いものであるならば、選考対象になるどころか、大きなプラスポイントになる可能性があります。
過去に未経験から設計職への転職に成功した方々の事例
ここからは具体的に未経験から設計職への転職を成功させた方々の実例を一部ご紹介します。
1.知識または経験がない状況から成功した事例
Case1.飲食業から機械部品商社の機械設計職へ転職を成功させた「Aさん」
Aさんは飲食業で副店長をしていました。あるきっかけから、どうしてもものづくりに携わりたいという思いが強くなり、弊社に相談に来られました。
出身は文系で全く知識もなく、当然経験もない状態だったので、さすがに厳しい状況でした。しかし、Aさん本人の「何が何でも、モノづくりが出来る設計者になるんだ!なりたいんだ!」という強い思いがあったので、少し時間がかかっても絶対に願いを叶えようと弊社も覚悟を決めました。
実際動いてみると、いくらまだ20代で若いと言っても文系で何の知識もないAさんに興味を持ってくれる企業はなく、非常に苦戦を強いられました。
しかし、Aさんの強い思いは本物だった為、その点を中心に各企業へ提案していきました。すると、機械部品を扱っている商社に興味をもっていただけ、開発部門に入社が決定しました。そして今では後輩も出来、設計者としてはまだまだですが、ある程度一人で出来るようにもなり、充実した日々を送っていらっしゃいます。
Aさん本人の「どうしてもやりたいんだ!そして絶対にやるんだ!」という覚悟が未経験から設計職への転職を成功させたポイントです。
Case2.営業職から機械部品メーカーの機械設計職へ転職を成功させた「Bさん」
Bさんは、理系の一流大学を出たのですが、就職活動の際、機械設計職は断念し、営業職として2社経験していました。その時33歳。営業職で設計者と接しているうちに、一度は断念した機械設計職になりたいという思いがおさえられなくなってしまったのです。自ら機械関連の資格の勉強をし、転職活動を進めていたのですが、さすがに33歳未経験ではうまくいかず、悩んでいたところで弊社と出会いました。
Aさん同様に「絶対に設計者になるんだ!」という強い思いがあり、更にBさんの場合は、自ら資格の勉強をするという行動も起こしていました。
当然、弊社での転職支援も苦戦はしましたが、粘り強く動き続けた結果、Bさんの熱意を理解していただける企業に出会い、現在はその企業で機械設計者として、チャレンジ中です。
Case3.施工管理から電子部品メーカーの製品設計職へ転職を成功させた「Cさん」
Cさんは大学では化学を専攻し、大学院まで勉強しました。しかし、卒業後は化学ではなく、大きなものの設計がしたいと思い、建設系の業界に進みました。入社後は施工管理となり、1年経ったら設計職になるとの話でしたが、そのような話は全くなかったことになってしまい、転職を考え始めました。
実際、話をしていくと、学生の頃は大きなものの設計をしたいと思っていたけれど、建設業界に携わってみて、大きいものよりも、身近で使われているような製品の設計がしたいという思いがあることに気付きました。
25歳で若いという武器はありましたが、さすがに大学での専攻が化学で、機械系の知識は全くない、そして新卒で入社してまだ1年という状況で、チャレンジできる企業は限られてしまいます。
Cさんは限られた候補企業の中の電子部品メーカーを検討しました。弊社から、Cさんの判断材料になればと思い、その電子部品メーカーのありとあらゆる情報を伝えました。Cさん自身が求めている環境やイメージと合致したようで、選考を進めることになります。
電子部品メーカーに提案したところ、未経験の第二新卒採用と考えていただくことが出来ました。どれくらい素養がありそうか、社内の雰囲気にあいそうか、どれくらいやりたいという強い思いがあるのか等を中心に面接をしていただきました。専門の筆記試験はボロボロだったようですが、人物面で高く評価いただき、無事内定となり、設計職として入社することが出来ました。
前職の施工管理の仕事は自分がやりたい仕事とは違ってはいたものの、指示待ちスタイルではなく、自分が主体的に仕事をしていたため、その経験から社会人としての受け答えがしっかりと出来、「この人なら大丈夫そうだな。」という感覚を与えられたのが、大きな成功要因だったと思います。
2.未経験でも、知識・経験が少しでも重なる部分を絞り出し、PRして転職成功した事例
Case1.大学中退、就職経験無しから精密機械メーカーの機械設計職へ就職を成功させた「Dさん」
Dさんは大学3年生の時に中退、実務経験無しという状況で、精密機械の機械設計職へ就職を成功させました。
成功したポイントは、学生時代に活動していたロボコンの自作ロボットのコンセプトや図面などを紹介資料にして、企業応募時の応募書類にしたことが大きいです。
また、好きでロボコンをやっていたため、自分が取り組んできたことをしっかりと説明できたことも成功要因です。実務経験はなくとも、ものづくりが好きということが伝わり、ポテンシャル採用となりました。
Case2.品質保証から医療機器メーカーの回路設計職へ転職を成功させた「Eさん」
Eさんは工業高校卒業後、学校の紹介で鉄道関連の電気的な検査や評価業務の職種に就き、7年間しっかりと経験を積んできました。
ある日、社内のコンテストで開発を経験させてもらう機会がありました。アイデア出しからユーザーへのヒアリング、仕様検討、協力会社への発注、完成品の調整といった一連の流れを経験しました。これがきっかけで、評価だけでなく、自分でものを生み出し、設計したいと思うようになったのです。
Eさんは元々、子供のころから電子工作が好きで、電気的なことは自分で勉強していました。その為、設計未経験でも、面接では技術的な会話が成り立ち、念願の医療機器メーカーに転職することが出来ました。
Case3.機械加工職から機械部品メーカーの製品設計開発職へ転職を成功させた「Fさん」
Fさんは工業高校卒業後、実家の機械加工会社で、機械加工と一部営業を行っていました。しかし、会社業績が厳しく、35歳目前にして将来不安から転職を考え始めました。
一緒にキャリアについて考え、整理した結果、加工だけでなく、もっと上流の経験を積んでおいたほうが良いと考え、設計職を目指すことになりました。
Fさんの場合、機械加工職ではありましたが、製品試作を進める際、CADで図面は書いたりしていました。また実家ということもあり、自分の担当だけでなく自社製品の設計から量産までの一連の流れは見ていたことから、製品が出来るまでの感覚は持っていました。
とは言え、34歳設計未経験ですので、設計職への転職活動は非常に苦戦しました。ほかのエージェントからは、しきりに特定派遣の企業を勧められていたようですが、Fさんはメーカーへの転職をあきらめずに活動を進めました。
ある時タイミング良く、候補企業が出てきました。「モノによっては外注を使いながら製品設計を進めていくから、コミュニケーション力があって、モノづくりの一連の流れのイメージを持っている人が欲しい。」というニーズだった為、Fさんに紹介しました。結果的には思った通りで、両者意気投合し、無事入社となりました。
3.未経験でもオペレーションレベルでは経験していたことから、思いを伝えて転職成功した事例
Case1.PLCラダー作成補助から、産業機械メーカーでの制御設計職へ転職を成功させた「Gさん」
Gさんと出会った時はなんと19歳でした。その際はすでに離職して8か月が経っていました。その間、アルバイトをしながら、就職活動は続けていたようなのですが、うまくいっていない状況でした。
詳細は以前のブログでご紹介しています → 離職期間1年の若手技術者が転職成功した話
Case2.機械加工、設備保全から、産業機械の制御専門会社へ転職を成功させた「Hさん」
Hさんは大学卒業後、機械加工の会社へ入社し、4年半が経ったところでした。業務内容は主に機械加工職で、それ以外に設備保全の一部業務として自社加工機のPLCプログラムの修正等も行っていました。
30歳目前となった時、社内の状況やその他様々な理由から、自分のキャリアを考えるようになりました。
Hさんは、今までの経験を考えると機械加工の会社への転職ということしか、思い浮かばないし、それ以外は可能性ないのではないかとあきらめていました。しかし、キャリアコンサルティングを通して、経験業務を振り返り、整理したところ、本人としては、制御設計をやっていきたいということに気づきました。
何社か産業機械、生産設備の電気制御設計職で、チャレンジしましたが、最終的に産業機械の制御を専門に行っている企業への入社が決まりました。
産業機械の制御設計者となるには経験が浅すぎましたが、電気保全を経験していたので、電気制御について全くの素人ではなかった点や、PLCだけでなくC言語のプログラミングも大学の時、楽しいと思った等、ポテンシャルを感じてもらえたことが成功したポイントです。
未経験から設計職へ転職を成功させるためのポイント
設計職になりたい、やっていきたいという強い思いを伝えられるかが重要
各事例から言えることは、設計職になりたいという思いをしっかりと伝えることが出来れば、未経験でもポテンシャル採用を検討いただける可能性があるということです。
しかし、ここで気を付けなければならないのは、ただ単に「設計職になりたいんです!」と元気良く言うだけでは良い結果にはなりません。
「それは何故そう思うのですか?」や「それであれば、今何か勉強してるんですか?」といったことに答えられるかが重要です。やりたいというだけではダメで、その説明が出来て初めて「なるほど、この人は本気で設計職になりたいんだな。」と思ってもらえるのです。
Bさんのように自ら勉強し、関連する資格を取得している。
設計経験なくとも、設計に必要な知識や、少しでも関連する経験を整理し、PRする
未経験でも、過去の経験から少しでもかするような経験を探し、しっかりと伝えることが重要です。「出来ない」「やったことない」だけで終わらせないことです。とにかく過去の経験を絞り出しましょう。
これは実務経験以外もOKです。というより、趣味でモノづくりを行っている人は、ポイント高いです。
DさんやEさんのように趣味でモノづくりを行っていたり、好きだから、知識を深めたくて自ら勉強している。
現職(離職中の場合は前職)での働く姿勢が重要
転職を考えるということは、何かしらの不満や不安があるからですが、現職(離職中の場合は前職)で、いい加減な仕事をしていたり、言われたことだけをするスタイルだったりでは、転職先でもうまくいきません。もちろん転職活動もうまくいきません。
まずは現職での働き方を見直して、意識を変えた上で転職活動に臨むことが成功の秘訣です。
Cさんは不満があっても仕事は真剣に考え、主体的に取り組んでいた為、面接での会話で信頼感につながった。
まとめ
未経験から設計職への転職を成功させる方法について、事例を挙げてお話してきましたが、最終的には、タイミング、運があるのも事実です。
これは転職活動に限らないことですが、どんなに頑張ってもダメな時はあります。逆にスッ、とうまくいってしまうこともあります。転職は人と企業との出会いですので、「縁」の影響は大きいです。
だからと言って、努力しないのは間違っています。努力なしでは正しい「縁」は見えません。「縁」は、しっかりと転職活動に取り組むことで、正しい方向が見えてくるものです。
また、未経験者にとっては、未経験可、ポテンシャル採用求人は非常に魅力です。しかし、転職先を決める事だけが目的となってしまったりすると、本来自分が描いていたキャリアを実現できなくなってしまう可能性があります。
未経験可だからといって飛びつくのではなく、それがどういった目的で募集しているのか、どのような会社なのか、どのような働き方が出来るのかなどなど、様々なことをしっかりと確認した上で、間違いの少ない転職活動を目指していただきたいです。
また、未経験だからと言って、「何も分かりません」、「全て教えてもらえるんですよね」というスタンスでは、うまくいきません。未経験でもその業務や業界に関することを自分なりに勉強していることは最低限必要なことです。おんぶにだっこで甘えたスタンスではなく、未経験でも攻めのスタンスは必要です。
未経験可求人がどのようなものがあるのか知りたい方は是非ご相談ください。