転職をする時に、皆さんはどれくらい悩んでいるのでしょうか。昔は終身雇用が当たり前と言われていて、最近は新卒入社3ヵ月以内に辞める人が増えていると言われ、転職は気軽な事になっているのでしょうか?
転職する事に対する考え方
転職に対する考え方は幾つかあります。どれも正しいかもしれませんし、どれも間違っているかもしれません。つまり正解はありません。しかし、様々な事例を知り、そこから考えてみる事が大事だと思います。
転職はすべきでない、という考え方
日本の歴史を考えていくと、転職をすべきでないと考えるのは当然かもしれません。島国で、鎖国をしていて、家系や仲間の意識が強く、戦国時代の転職は裏切りを意味します。また、職人が多く存在したり、現代になってからもサラリーマンは終身雇用、雇用契約を結んで入社する=定年まで働く約束、と考えられるでしょう。その為、人事制度や給与制度も終身雇用を前提とした内容になっていました。こう考えると、現在も転職に対して否定的な考えの方が多いのは納得できます。そして、雇う側・育てる側としては辞めて欲しくないと考えるでしょう。
転職は最後の選択肢、という考え方
転職はすべきではない!しかし、転職するしかない状況というのはあり得るので、転職は最後の選択肢として使うべき、という考えの方も多いのではないでしょうか。転職するしかない状況というのはどういうものなのか。例えば、会社の倒産、経済的に成り立たなくなる、身体的に続けられなくなる、精神的に続けられなくなる、物理的に就業出来なくなる、というのが考えらえる内容でしょうか。
前向きな転職であればすべき、という考え方
転職には、前向きと後ろ向きがあり、その前向きな理由であればすべきという考え方です。日本国内でも転職が普通に行われるようになってきてから、増えてきた考え方ではないでしょうか。前向きとは恐らく、スキルアップ、ステップアップ、キャリアチェンジ、というように、自身を上げる転職と考えられます。逆に、後ろ向きというのは、「逃げの転職」というもので、現職への不満、人間関係や仕事が上手くいかない、理由はともかく嫌になってしまったから、等ではないでしょうか。
良い話であれば転職すべき、という考え方
これは、欧米やアジアの一部では多い考え方で、日本では嫌がられる事もあるようですが、「今より良い条件・環境」へのジョブホップと言われるものです。しかし、よく考えてみれば、今より悪い条件のところへわざわざ行きたいという人はいないでしょうから、当たり前の事と言えるかもしれません。
我慢するくらいなら転職すべき、という考え方
少し乱暴な言い方に聞こえるかもしれませんが、『現職を続ける=我慢しなければいけない』という状態にある場合です。例えば、最近増えているハラスメント問題等が頭に浮かびます。そして、3つ前の『転職が最後の手段』という方とイコールになる場合も多いと思われます。しかし、中にはその『我慢』の基準が凄く低い人もいるかもしれません。
転職すべきか悩む方の事例
実際に弊社にご相談にいらっしゃる方は、転職すべきか悩んだ状態でいらっしゃる方が多いです。それらの方は何に悩んでいるのか。前項の転職に対する考え方を踏まえながら、事例をあげてみます。
辞めたくないけど・・・と悩む方
本当は辞めたくないけれど、転職すべきなのか、と悩む方がいます。幾つかの事例がありますが、『会社の業績が悪すぎる』、『給与基準が低すぎる、上がらない』、『転勤の辞令が出て、家庭の事情で動けない』、等が主な理由としてあげられます。共通するのは、『会社も仕事も好きだけど・・・』というところです。前項の、『転職はすべきでない』、『転職は最後の選択肢』に当てはまりますね。この事例で深刻なのが、会社の業績や給与に関する内容です。中小規模以下のものづくり企業では、こういった問題が少なくありません。実際に弊社にご相談に来る技術者の方も、入社以来ほとんど給与が上がらない、賞与が出てない、(もっと酷くなると)給与が遅延している、というように深刻な問題を抱えている方がいらっしゃいます。そして、それでも悩んでいるというのは、『出来れば辞めたくない』という気持ちが強いからです。相談を受ける側としても、非常に悩ましい内容です。
やりたい事が見つかったんですけど・・・
仕事を続ける中で、もっとやりたい事、チャレンジしたい事が見つかったという方は、転職支援の定番でもあります。前項の『前向きな転職であればすべき』に当てはまりますね。弊社でも非常に多い相談事例です。特に多いのが、『設計職にチャレンジしたい』、『業界、製品、技術の中で、明確にやりたい事が見つかった』という内容です。つまり、『現職では出来ない、転職しないと出来ない』という理由に繋がります。それでも悩むというのは、現職に対する想いと、チャレンジのリスクに対しての不安、があるものと考えられます。
良い求人ないですかね・・・
今のままでも悪くないのだけれど、もっと良い話はないですかね?というのは、前項の『良い話があれば転職すべき』という方です。根本にあるのは、現職への不満、物足りなさ、刺激の欲しさ等でしょうか。もう少し明確な事例では、『待遇が良くなる』、『大きい、有名な企業へ移れる』、『話題の企業・製品に携われる』、『グローバルな仕事が出来る』というように、自身の満足度を上げるという事かもしれません。
転職失敗しました・・・
入社間もない会社で、『思っていたのと違う』、『前の会社の方が良かった』、場合によっては『騙された!』という人までいます。これは前項の『我慢するくらいなら転職すべき』の中でもネガティブな事例です。現職の在職期間が短くて転職相談に来る方は、このパターンが多いです。せっかく悩んで、リスクを覚悟して、転職活動をして入った会社なのに・・・と思ってしまいますね。事情はそれぞれ、原因もそれぞれです。因みに、これの新卒者の場合は、最近ニュース等でも取り上げられる、『就職してすぐ辞めてしまう若者』になるのでしょうが、悩んでいる人はそれ以上に多いと思います。実際に弊社でも、5月の時点で相談にいらっしゃった方がいました。繰り返し『就活を失敗しました。やり直したい。大学院に入りなおそうか。』と言っている方もいました。
まとめ
転職に関する考え方、実際に悩んでいる人たちの事例を幾つかあげてみました。共通して言えるのは、多くの方が悩んでいるという事です。それぞれがそれぞれの事情で悩んでいる訳ですから、正解はありません。転職をすべきかどうかも、一概に言えるものではありません。しっかりと悩んで自分なりの答えを出すのが正解なのかもしれません。それらを踏まえて、キャリアコンサルタントとして、転職エージェントとして、少々アドバイスも書かせて頂きます。
キャリアコンサルタントとしてのアドバイス
ご自身の大事なキャリアですから、大いに悩むべきだと思います。そして、答えを焦る必要はありません。転職を良い悪いと決めるのではなく、手段の一つとして考えてみてください。そして大事なのは、目先の事だけ考えずに、将来の事もまで考える事です。キャリアは人生と考え、未来の自分をしっかりと考えてください。
転職エージェントとしてのアドバイス
転職にはリスクが必ずありますので、転職しないに越したことはありません。しかし、転職をしなければ成し遂げられない事はあります。そして、第三者から見て『明らかに転職すべき』という方もいらっしゃいます。これは前項の『辞めたくないけど・・・』と悩んでいる方の中にいると思います。ご自身の【キャリア≒人生】を犠牲にしてまで我慢するのか、悩んだ時は第三者(家族、友人、専門家など)の意見に耳を傾ける事も重要です。そして、転職にはタイミングや運がありますので、チャンスを逃さないようにするのも大事な事です。